AI時代のエンジニアについて vol.1——気がきく力
AIがコードを書く時代、エンジニアの価値は「気がきくかどうか」で決まります。技術力の先にある、本当に求められる能力について解説します。

はじめに
AIがコードを書く時代になりました。
Claude Code、GitHub Copilot、Cursor——これらのツールを使えば、誰でもそれなりのコードが書けます。コードを書けること自体の価値は、急速に下がっています。
では、これからのエンジニアに求められるものは何か?
それは**「気がきく力」**です。
「コードが書ける」だけでは差がつかない
以前のエンジニアの価値
コードが書ける = 価値がある
プログラミングは専門技術でした。書けるだけで希少価値がありました。「プログラミングができる」というだけで、就職も転職も有利でした。
今のエンジニアの価値
コードが書ける = 当たり前
AIを使えば誰でも書ける
AIの登場により、コードを書くこと自体は誰でもできるようになりました。プログラミング未経験の人でも、AIに指示すればそれなりのコードが生成されます。
これからのエンジニアの価値
気がきく = 価値がある
言われなくても必要なことに気づける
差がつくのは、技術力ではなく「気がきくかどうか」です。
「気がきく」とは何か
1. 言われる前に気づく
❌ 気がきかないエンジニア
「その仕様は聞いていません」
「言われた通りに作りました」
✅ 気がきくエンジニア
「この場合はどうなりますか?先に確認させてください」
「言われてはいませんが、これも必要だと思って対応しました」
仕様書に書かれていないことは、世の中にたくさんあります。言われたことだけをやるのではなく、「これは確認した方がいいのでは?」と気づけるかどうか。これが大きな差になります。
2. 相手の立場で考える
❌ 気がきかないエンジニア
「技術的には正しいです」
「仕様通りです」
✅ 気がきくエンジニア
「ユーザーはこう感じるかもしれません」
「運用する人のことを考えると、こうした方がいいと思います」
技術的に正しいことと、ユーザーにとって良いことは、必ずしも一致しません。「自分が正しい」ではなく、「相手にとってどうか」を考えられるエンジニアは重宝されます。
3. 一歩先を読む
❌ 気がきかないエンジニア
「今の要件は満たしています」
「将来のことは言われていません」
✅ 気がきくエンジニア
「将来こういう要望が出そうなので、拡張しやすい設計にしました」
「この機能を使うなら、あの機能も必要になりますよね」
今だけを見るのではなく、少し先の未来を想像する。「この後どうなるか」を考えられると、手戻りが減り、チーム全体の生産性が上がります。
気がきくエンジニアの具体例
例1:要件定義の場面
依頼内容: 「ユーザー一覧画面を作ってください」
気がきかないエンジニア
→ ユーザー一覧画面を作る
→ 完成
気がきくエンジニア
確認します:
- 「一覧は何件くらい想定ですか?1000件超えるなら
ページネーションが必要ですね」
- 「検索やフィルタ機能は必要ですか?」
- 「CSVエクスポートは要りますか?運用で使いそうです」
- 「削除したユーザーも表示しますか?」
- 「誰がこの画面を使いますか?権限制御は必要ですか?」
言われていないことに気づき、先に確認する。
ただし、確認しすぎて手が止まるのも問題です。手戻りは全然OK。 AI時代は、やり直しが簡単だから。「とりあえず作ってみて、違ったら直す」でも大丈夫です。大事なのは、気づける目を持っておくこと。気づいたら確認する、気づかなかったら後から直す。どちらでもOKです。
例2:コードレビューの場面
レビュー依頼: 「ログイン機能のPRです。確認お願いします」
気がきかないエンジニア
→ コードを見る
→ 「LGTMです」
気がきくエンジニア
レビューコメント:
- 「ログイン失敗時のメッセージ、『認証に失敗しました』だと
ユーザーが何を間違えたかわからないかも。
『メールアドレスまたはパスワードが正しくありません』
の方が親切では?」
- 「パスワード5回間違えたらロックする仕様でしたっけ?
セキュリティ的にあった方がいいと思います」
- 「ログイン成功時のリダイレクト先、
元々見ようとしていたページに戻せると
ユーザー体験が良くなりますね」
技術的な正しさだけでなく、ユーザー体験や運用を考える。
例3:障害対応の場面
状況: 「本番でエラーが出ています」
気がきかないエンジニア
→ エラーを調査
→ 修正してデプロイ
→ 「直しました」
気がきくエンジニア
対応:
1. まず関係者に状況を共有
「〇〇機能でエラーが発生しています。
影響範囲は〇〇です。現在調査中、30分以内に続報します」
2. 修正してデプロイ
3. 事後対応
「原因と再発防止策をまとめました」
「同じようなコードが他にないか確認しました」
「監視アラートを追加しました」
目の前の問題だけでなく、関係者への配慮と将来への備えを考える。
なぜ「気がきく力」が重要なのか
AIにできないこと
AIができること:
✅ コードを書く
✅ バグを見つける
✅ リファクタリングする
✅ テストを書く
AIができないこと:
❌ 「この仕様、ユーザーは混乱しそう」と気づく
❌ 「あの人、困ってそうだな」と察する
❌ 「これ、後で問題になりそう」と予見する
❌ 「言われてないけど、やっておいた方がいい」と判断する
気がきくことは、人間にしかできません。 だからこそ、AI時代に価値が上がるのです。
ビジネスへの影響
| 気がきかない開発 | 気がきく開発 |
|---|---|
| 言われたことだけ作る | 必要なことを先に提案する |
| 手戻りが多い | 手戻りが少ない |
| 運用で問題が出る | 運用しやすい |
| ユーザーからクレーム | ユーザーが満足 |
| 「もう一度やり直し」 | 「さすが、わかってる」 |
気がきくエンジニアは、ビジネスの成功に直結します。
気がきく力を身につけるには
1. 「なぜ?」を常に考える
言われたこと:「この画面を作ってください」
考えること:
- なぜこの画面が必要なのか?
- 誰が使うのか?
- どういう状況で使うのか?
- 何を達成したいのか?
背景を理解すると、言われていないことに気づけます。
2. 相手の立場に立つ
コードを書くとき:
- 「このコード、半年後の自分が読んで理解できるか?」
- 「このエラーメッセージ、ユーザーは何をすればいいかわかるか?」
- 「この設計、他のエンジニアが拡張しやすいか?」
3. フィードバックを求める
定期的に確認:
- 「私の対応で、気がきかないと感じたことはありますか?」
- 「もっとこうしてほしい、ということはありますか?」
自分では気づけないことを、他者から学びます。
まとめ
AIがコードを書く時代、エンジニアの価値は**技術力ではなく「気がきく力」**で決まります。
- 言われる前に気づく
- 相手の立場で考える
- 一歩先を読む
「この人がいると安心」と思われるエンジニアを目指しましょう。
それは、コードを書く速さではなく、どれだけ周りのことを考えられるかで決まります。
AI時代のエンジニアシリーズ: